――三上先生は、ファンの方から手紙だけではなくて、プレゼントをもらうことがとても多いそうですね。
●三上 そうですね。手紙だけでも十分うれしいんですよ。むしろ、プレゼントがいっぱい届くと、あんまり無理しないでねとか思ってしまいます。でもいただいたものは大事に使わせてもらっていますよ。手紙とかプレゼントをいただくと、作品を愛してくれてるんだなと実感できて、僕も何かそれにこたえることができたらなと作品を描くモチベーションになります。読者と対話しながら作れたらいいな、というのが理想としてありますね。
――今日していらっしゃるマフラーもファンの方からもらったものだそうですね。
Tシャツ痛みのバーテンダー
●三上 そうなんですよ。みんなすごくセンスがよくて。あとちょっとおもしろいのが、例えば、一人の方からマグカップが届くとしますよね。そうしたら、全然違う場所に住んでいる方からティーポットが届いて、また違う方からは紅茶が届いて紅茶のセットができたり、今度はアロマキャンドルか届いたと思ったら別の方から入浴剤が届いて、気づいたらハーブの香りのセットができたり(笑)。みんなで話し合っているわけじゃないのに、アイテムがうまく組み合わさってセットができるのはおもしろいし、うれしいですね。
――手紙も凝ったものが多いようですね。
●三上 ただ売っているものそのままではなくて、シールを重ねてみたり、自分なりのデコレーションを加えてくれた手紙が多くて。見ていておもしろいものがたくさんありますね。
――内容はどんなことが多いんですか。
3 Oクロックで妄想
●三上 作品の感想や、どのキャラが好きかというのと、あと僕が特に好きなのは、ファンの方がふだんどういうふうに生活しているか、が書いてあるもの。『罪花罰』を読んでくれている方はふだんそうやって生きているんだみたいなのがわかるとうれしいし、生活の中にどういうふうに『罪花罰』が加わってきたかということがわかると「おお、そうやって出会ってくれたのか」と思うし。前に、保育園の先生から「子供と一緒に読んでます」っていう手紙をもらったことがあって。「表現によっては見せられないときがあるんだけど、すごく楽しみで読んでる」みたいな(笑)。それもすごくうれしかったです。「上京してきて友達も周りにいなくて、何とか仕事を始めてみたものの、ちょっと不安定� ��なっているときに出会えてうれしかったです」とか「入院中に読んで励みになった」というのようなものを読むと僕のほうもグっと来るものがあります。
――ギャグ漫画にはそういうところがありますよね。元気をくれるというか。
●三上 そう思ってもらえたらいいんですけど。
Tシャツ痛みによる "バーテンダー"のミュージックビデオ
――漫画を描き始めた当初から、ギャグでといこうと思われたんですか。
●三上 そうですね。必死に、自分にできることは何かと無理やりひねり出したのが偶然ギャグだったという感じなんですけど。最初はコマも割れなかったので、四コマなら描けるかなと思って描いてみた感じです。それで「月刊ジャンプ」の賞に応募して最終候補に残って、なんとかネームを見ていただけるようになりました。本当にくだらない、どうしようもない感じのギャグ漫画でした。
――漫画はずっと描いていらしたんですか?
●三上 ひとりでちょくちょく描く感じでああったんですけと、思い切って挑めるほどの自信がなくて。大学を出てから一、二年は、就職できずに部屋でごろごろしているような、わかりやすくだめな感じを続けていました。くすぶっていましたね。でもあまりにも毎日ぐうたらし過ぎて「おれは何をやってるんだろう」と心が痛み始めて。「このままだめなんだったら、漫画を一回ぐらい本気で描いてみよう。それでだめでも、今のだめとあんまり変わるわけでもないし」と思って、応募してみたんです。
――大学時代はどんなふうに過ごしていらしたのでしょう。専攻は美術系ですか?
●三上 いえ、法律です。法律の勉強は別に嫌いじゃなかったんですけど、自分のやりたいものではないなと途中で思ってしまって、大学の図書館に通うようになりました。今ではなかなか読めない本というのがたくさんあったので、それをできるだけ読んでみようと。地下に大きな書庫みたいなものがあって、持ち出せないけどその場では読めるような貴重な本を片っ端から読むのを続けていたら「普通に生きるのはどうなのか……」とか、よくわからない方向に行ってしまって(笑)。何かこう、アバンギャルドを気取っているような周りの人たちと一緒に「就職なんかしないぜ!」って感じのノリでいたら、急に、みんな就職が決まってしまった。「えっ、僕だけだめなまんまなの?」って(笑)。
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